「時間はね、どんなに頑張ってみてもその人にプラスだと思われないと駄目なんだよ」
ゆったり話す
「ここには時間が無い」
「そのことが君を救った」
「でもそれは違う」
一言一言紡ぐかのように
「どうして・・・」
恐怖がここにも顔を潜めているんだ
「君が生きてるから」
追われる
「時間が無い世界では生きていけない」
どこまでも
「まるで酸素のようなものなんだ」
どこまでもどこまでも
「こっち側で何も無しで生きていけるのは、僕ともう一人の番人だけなんだ。それでも酷く詰まらないから、こうしてトランクをもって少しだけ時間を食べる」
「美味しいのもあれば、不味いのもある。でも大体は無味無臭、色だけが鮮やか」
ほらね、と彼は私にシフォンケーキのようなものを渡す
口に含むと、ピンクのいかにも甘そうなクリームに全く味の付いていないことに驚く
「いつまでもここに居たら、ここに救いを求めていたら、君は死んでしまうよ」
「でもそれでも良いって思ったから、僕がここに連れてきたんだ」
「どうして・・・」
さっきから口に出るのはこの一言だけだ
「知って欲しいことがあったから」
人指しを私の目の前に持ってくる
「ねェ、」
彼は真っ直ぐ私の目を見て言った
「時間って何だと思う?」
次の瞬間、視界に現れたのは見慣れた天井だった